では、いきなり核心の話から始めよう。ドラッカーが、マネジメントをどう定義したかについてだ。実は、これを明らかにするのが意外に困難なのだ。

ドラッカーのマネジメント論の双璧は、先にもふれた『現代の経営』、それに『マネジメント』(1970年)だ。とはいえ、いずれの本も、全編がマネジメントの解説に費やされているといっても過言ではない。短い言葉で、マネジメントの本質を言い表した適当な定義が見あたらないのだ。実際、ドラッカー自身も「『マネジメント』という言葉は、奇妙なほど難しい言葉である*2」と述べるほどだ。
一方、他の著作をあたると、ドラッカーが、マネジメントの要所を言い当てた言葉を見出せる。その典型は『明日を支配するもの』(1999年)の中の次の一言だ。
「組織をして成果を上げさせるための道具、機能、機関がマネジメントである*3」
ドラッカーのマネジメントの定義とは何かと訊かれたら、この一節を引用するのがよいと、筆者は考えている。とはいえ、この一言からマネジメントの本質を深く理解するのは少々困難だろう。理解をより深めるには、ドラッカーの言わんとする「組織」についてまず知る必要がある。
ドラッカーは、政府や自治体、病院、学校、企業など、世の中にあるあらゆる組織が「社会の機関」であると、繰り返し指摘した。ドラッカーの言う「機関」とは、「ある目的を達成するために設けられた働き」とでも言い換えられるだろう。したがって、組織とは、社会に何らかの形で貢献することを目的とするもの、このようにとらえられよう。
となると、組織にとっての成果とは、特定の社会目的を実現して、特定のニーズを満足させるということになる。たとえば、病院は病気を治すことで患者のニーズに応え、成果を上げる。学校は教育を施すことで生徒のニーズに応じて成果を上げるのだ。
そして、こうした組織に、成果を上げさせる道具、機能、機関、それがマネジメントというわけだ。言い換えるならば、マネジメントとは、社会機関としての組織が、特定の目的達成を押し進めるための、あらゆる働きの総称なのだ。

